T邸では今までの仕事の中で、一番制作的に関わったように思います。
無謀すぎるくらい、さまざまな試みを各所に展開しました。
チャンスがあればやりたいだけやった方が良い・・・、そう思ったのですね。
最初の頃はインテリアのスパイスのようなつもりで、主に小物を作りましたが、
T邸では主役級のポジションをにないました。
構成(設計)・デザイン・素材・カラーリング・アイテム・・・、全てがうまい具合に
つながり合い、活かしあって場づくりが出来上がります。
それに施主のさまざまな持ち物や、ライフスタイルが重なり合って生活の
場となっていきます。
施主との偶然な出会いがあり、共感するところがあってデザインが出来上がる
というのは本当にありがたいことです。
施主のためにやっているのか、自分のためにやっているのか・・・。
一つ忘れていたリクエストが浴室の入口の枠に付ける取っ手。
これまでは木工コーナーの銘木を加工していたのですが、今回はそこで
ウイスキーたるのうまい具合に湾曲しているパーツを見つけました。
「これいける・・・。」
4センチくらいの巾に割いて面取り。
裏側に当たる所はウイスキーがしみこんで変色しています。
材を切り出して意志的な形を作るよりも、
他を流用して自身のデザイン的意志をあまり入れないことのおもしろさを
最後の最後に見つけました。