柿渋を塗るつもりもあって出掛けた現場ですが、
左官屋さんと完全にバッティング、全部屋が左官屋さんの舞台となっていて
彼らが去った後でないと出来そうにありません。
今日一日で下塗りが終わるかどうか、といったところですがボード面が
白くなって部屋全体が明るくなりました。
ブログを書き始めて大部になりますが、ある時から心掛けていることが
職人さん達の手業を記録することです。
建築の現場から手業がどんどん少なくなってきているという現実があります。
コストを優先するあまり、現場作業を極力少なくする、出来合のものを設置
していくやり方が主流となってきています。
ビニールクロス貼りは左官仕上げの1/3~1/4のコストですし、建具も既製品が
一般的、ユニットバスは悪くないと思いますが台所は大体システムキッチン、
ワードローブ、各種住設・・・、カタログで選び現場ではそれの組み立てや
設置作業・・・。
造作が出来る大工さんが少なくなり、出来合のパーツが幅を利かせているため
材の加工をすることが本当に減ってきているとのことです。
多分タイル屋さんの仕事も少なくなっているはずです、浴室から台所から
タイルの姿が消えてしまいました。
左官屋さんも最低3年~5年は辛抱して仕事を覚えなくては行けません。
今日は若い左官屋さんが来ていましたが、珍しいことで「若い人を撮って」
と松丸さんが言っていました。
T邸は手業の塊のような現場とも言えます。
快適で居心地の良い場を作ることが主たる目的ですから、
手業を出来るだけ少なくするという選択はありません、・・・が、
全てがコストに反映されるということを思うと複雑な気持ちです。
設計者である私自身が柿渋を塗ったり木工をやったり紙を貼ったりするのは
作ること自体が好きと言うこともありますが、
細部にまで手業を行き渡らせると言うこともあります。
過剰な手業の表現とならないように気をつけていますが、
手の跡を感じさせない、作り手(職人さん)のプロセスを感じさせない
住まいというのはどこか寂しく感じますね。