住まいづくりの4つの柱

長寿命化リフォーム(耐震性能、省エネ性能、バリアフリー) / 手をかけて永く住まう工夫

もったいない日本の住宅事情

日本では住宅が建てられてから取り壊されるまでの平均年数が27年という統計があります。
私の住む自宅兼事務所は築30年を超えましたが同時期に建てられた近隣の住宅も次々に建て替えられ、 そのたびに「まだ住めるのになぁ・・」と少しさみしい気持ちになります。一方で、海外に目を向けてみると、 同じような統計があり、アメリカでは64年イギリスでは84年と、日本の約2~3倍の開きがあります。 これは、住宅の構造の違いや、気候などの環境が異なるため一概に比べることはできませんが、 少なくとも、築30年程度で建て替えを検討するのではなく、生活スタイルに合わせて新しいものを取り入れ、 手を加えながらうまく付き合っているという事がいえます。

柔軟な住まいのカタチ

住まいは新築でも住み始めてから10年もたてば何かしらの不具合やメンテナンスの必要性が出たり、手を加えたいと思う場所が出てくるものです。それは、時の経過によって住まいが傷ついたり汚れてきたり、住宅設備が古くなることとあわせて子どもが成長することや、親との同居等で家族構成が変わったり定年退職後に住まいでの過ごし方が大きく変わるなど、様々なライフステージにおいて住まいに求めるものが変化するといった当然の成り行きからです。

住まいに求めるものが変わった時に、改めてこれからの「住まいのカタチ」を考え、「耐久性能」「省エネ性能」「バリアフリー性能」と言った長寿命化リフォームの3つの基本要素をバランスよく取り入れ、末永く快適にすごせる住まいをつくることが重要です。

耐震性能

住まいの丈夫さとは

同じ住まいで末永く暮らすには、当然ながら住まいの耐久性が高く丈夫でなければなりません。住まいの丈夫さは、住まいを外部環境から守っている外皮の部分と、内側から支えている骨格の部分、この二つがしっかりとつくられ、しっかりと維持されているかどうかがポイントになります。

住まいを外部環境から守る

外皮である屋根や外壁は常に風雨や太陽光にさらされており、住まいを構成する建材の中でも最も厳しい環境にああります。そのため十分な性能を維持し、住まいを守る役割をはたすには素材によってバラつきはあるものの、10~20年の周期で塗装や防水処理・取り替えなどのメンテナンスが必要になります。

住まいを内側から支える

骨格となる基礎や柱・梁・壁などの構造体は住まい全体を支え地震から守っている縁の下の力持ち的存在です。古い建物や増改築した建物では強度に不安がある場合もあります。現在の基準に照らし合わせて評価し、問題があれば適切に補強することで建物全体の強度を保ちます。
また、これらの構造体は、仕上げ材などに隠れてしまうことが多く完成した後はあまり見ることが出来ません。そのため、湿気・雨漏りによる腐りや、シロアリなどの害虫によって侵食された場合にも気づきにく、発見が遅れた場合には住まいの耐久性能を著しく落としてしまいます。こういった問題が発生しないように、また発生したとしても最小限に抑えられるように床下は防湿・害虫対策などを行い、その他の部分についても専門家による定期的な点検を受けることで住まいを丈夫に保つことができます。

省エネ性能

住まいのエネルギー事情

住まいで使用される電気・ガス・灯油等のエネルギーは、暖冷房、給湯、炊事、家電製品様々な用途で利用されています。その中でも消費する比率が多く、断熱性や機密性といった住まいの基本性能に直接関連しているのが冷暖房です。冷暖房の効果を上げ、住まいの消費エネルギーを抑えるためには断熱性・機密性を高め、熱損失の少ない住まいにすることが必要です。

リフォームで高断熱・高気密化

住まいの中で最も熱損失が多いのが窓などの開口部です。1枚のガラスと金属出来ている窓は熱を通しやすいため、複層ガラスの断熱サッシに取り替えたり、既存のサッシの内側にもう一組サッシを取り付ける2重サッシにすることで断熱効果が大きく改善します。また、内側に障子を取り付けることも有効で、一定の効果が得られます。その他にも、床下、壁、天井、小屋裏に断熱材の追加や小屋裏換気の設置。仕上げ材を断熱性の高い無垢のフローリングや珪藻土塗の壁や天井にすると言った方法で断熱性・機密性を高めます。
リフォームによって住まいの断熱性と機密性を高めることで、日々のエネルギー消費を減らし光熱費を抑えた環境にも優しい住まいが出来上がります。

バリアフリー性能

バリアフリー住宅とは

バリアフリー住宅とは「障壁のない住宅」という意味で、生活の中でのあらゆる障害や負担(バリア)を減らすことで「体に優しく、安全な住まいで生活する。」という考え方から生まれたものです。

バリアフリーは誰のため?

バリアフリーは高齢者や障害を持った特定の方々のためのものと考えられがちです。たしかに現在長寿国である日本は少子高齢化社会をむかえ、これから更に増えるシルバー世代の方々に充実した生活を暮らしていただくためにも住まいや公共施設のバリアフリー化が課題になっています。しかし、本来のバリアフリー環境とは、子供から大人まで万人に等しく優しい、誰もがその恩恵を受けられるものなのです。

バリアフリー化リフォームの内容

バリアフリー化リフォームは、それぞれのご家族・住まいによって様々です。一つ一つの障害を確認し具体的な解決策となるプランを検討します。代表的な内容はは下記のとおりです。

  • 同一階の段差を無くす
  • 手すりや滑り止めの設置
  • 夜間足元を照らすライトの設置
  • トイレの新設
  • 高機能化したユニットバスへの取り替え
  • 急勾配の階段を緩やかな階段に掛け替え

時には逆転の発想も

2階の寝室を1階の部屋に変更し、動線をコンパクトに抑えてワンフロアで生活を完結できるようにする。といった例があります。
住む人にあわせて住まいをカタチづくるのが基本ですが、住まいにあわせて生活を変える事をひとつの選択肢として残しておくことでシンプルに解決できる問題もあります。

バリアフリーリフォームのタイミング

今すぐに必要性を感じていなくても将来に備えてバリアフリー化する方が増えています。加齢による身体能力の低下は誰にでも起こることで、そのために「見る」「歩く」「座る」「立つ」「握る」といった動作が遅くなったり弱くなってしまう事は前もって分かっていることです。転倒などの家庭内事故が発生してから対応するのではなく、防止することに備え、将来を考えた前向きなリフォームを行うことで、体にやさしく・安全な住まいで充実した生活をおくる事ができます。