1駅離れた場所に住んでいた娘家族が近くの中古のマンションを購入し越してくることになりました。寄り駅までの距離がネックになっていましたが生活インフラが充実していて利便性が高いことや緑が多く子育てをするには良い環境ということで決まったようです。
築年数、30年弱のマンションなので全面的なリフォームが前提になり、また、子供を幼稚園へ入れるタイミングがかさなったので購入が決まってからは大急ぎのリフォームとなりました。
大まかな要望と予算が伝えられ、その他の部分は
ほぼ一任される形でプランづくりがスタートし、
娘家族の住まいで急ぎのリフォーム計画、現場が近いという条件が
かさなったこともあり職人さんを直接手配して工事を行うことになりました。
使う人に合わせてすべてを決められるオリジナルキッチン。コンパクトなスペースの中にたくさんのアイデアを盛り込んで設計し、家具屋さん・石屋さん・タイル屋さん・水道屋さん・ガス屋さん・電気屋さん・左官屋さん・大工さん等、高い技術を持った多くの職人さんの手によってつくられた世界に一つのキッチンです。
トップ天板:天然大理石 20mm厚 | |
造作部分:パイン材 | 扉仕上げ:OSB材 |
壁面:モザイクタイル25mm角 | コンロ:ハーマン社 |
レンジフード:キッチンパネル 大工さんによる造作 |
シンク収納辞典社製 |
キッチンを機能的に使うための収納を前面・側面・背面の3面とダイニング側のカウンターとベンチに設けました。
●前面収納:キッチンキャビネット内はすべて奥まで有効に使えて物を取り出しやすい引き出し式。大きな鍋から小さな調理器具まで使う機会の多いものを収納するためのスペースとして利用出来ます。上部にはカウンターを設け常時使う調味料や調理中の食材を一時的に置く場所にして、さらにもう一段曲面の飾り棚を設けてお気に入りの食器などを飾れるようにしました。
●側面収納:オープン棚にケースを入れて使用。
●背面収納:開き式と引き出し式の収納、ゴミ箱スペース。上段は電子レンジや炊飯器等の調理器具を置くスペースになっています。
●ダイニング側:小さなパントリーカウンターを作り、下部は引き出し収納、上部は飾り棚になっています。ダイニングの作りつけのベンチはスペースの有効利用と共に、内部はあまり使う機会がないもの等を収める収納として利用します。
限られたスペースの中でも機能的に使える様、食材や調理器具・食器などを利用頻度や用途別に収められるように作りこんだオリジナルキッチンになっています。
キッチンの脇に配膳台や作業台として使えるパントリーカウンターを設けました。コンパクトなキッチンだからこそ必要に応じて色々な使い方ができる便利なスペース。それぞれの住まいに合わせ、小さなアイデアをひとつひとつ形にできるのがオリジナルキッチンの良いところです。
コンパクトなキッチンスペースながら背面の収納・冷蔵庫との距離は1140mmあり物を持った状態でもすれ違えるスペースを確保しています。ワークトライアングル(※)は4070mmで無駄な動きが少ないキッチンになっています。
シンク・コンロ・冷蔵庫、各3点の中心から中心までの距離の合計のこと。キッチン内で最も作業の多い3点の距離を基準に作業性を数値化する指標です。一般的に3600~6000mmの範囲に収まっていることが理想とされておりそれより短ければ作業のスペースが足りず、長ければ無駄な動きが多くなると言われています。
キッチンからリビング・ダイニング方向の眺め。キッチンに立っている時でもこどもたちの様子がうかがえるレイアウトです。
キッチンと収納棚のワークトップは天然の大理石を使い素材を統一することでまとまりをもたせました。粉物系料理を作る際のこね台にもなり、見た目も美しい大理石です。
パントリーカウンターの飾り棚。キッチンとダイニングの天井に段差あるので雲形の天板を取り付けて収めました。
リフォーム前のキッチンはリビング・ダイニングに背を向ける方向にレイアウトされていました。今回のリフォームでは90度振る形でレイアウトを変更することで子供の様子を見ながらキッチンでの作業が出来るようになりました。目の離せない年頃の子供をもつお母さんにとっては重要なポイントの一つです。また、これはリビング・ダイニングにいる子供にとっても同様でお母さんの後ろ姿ではなく横顔が見えるところで過ごす事ができます。キッチンの配置一つで距離を置きながらも家族のつながりを持つことが出来る空間になりました。
リビングにある棚のTVを挟んだ両側は2人の子供達の専用デスクスペースです。お絵描きをしたり、工作をしたり、お人形遊びをしたり、子供たちの想像力を発揮する場所をリビングの中につくりました。
おもちゃを片付ける場所もココと決めておもちゃ箱を収め、棚板や壁面にお気に入りのシールやつくったものを貼ったりして愛着をもってそれぞれ専用の場所を使ってくれているようです。
キッチン・リビング・ダイニングは共通の仕上げでフローリングは26mm厚のボルドーパイン無垢材に天然オイル塗装、壁面と天井は珪藻土の塗り壁を選びました。 ひとつながりで広々とした空間は南に面した窓から明るい光が入り、天然素材で囲まれた快適な空間になりました。
その他の部屋ついても部屋ごとに仕上げを変えるのではなく、基本的に同じ天然素材を使い住まい全体の統一感を大切にしました。余分なコストを出さないことと、工期の短縮にもつながっています。
コンパクトな住まいの中にも快適性と利便性高めるため、天然素材を使う事と同時に造り付けの家具や造作物を細かなアイデアと遊び心のあるディティール取り入れて制作しました。
リビングには和室につながる襖を半分のサイズにして天井までの大きな棚を設けました。無垢材をはしご状に組んだこの棚は、約8センチの間隔で組んである横棒の隙間に棚板を差し込み、収めるものに合わせて高さを変更できます。また、棚の奥行き30センチに対して棚板の奥行きを13.5センチにし、1枚もしくは2枚使いと奥行きについても調整が可能です。テレビをはじめとしたAV機器の台として、本棚、飾り棚として多用途に使えるように自由度をもたせました。
リビングと廊下の間の扉は化粧材向けにサンダーがかけてあるOSB材に円形の穴をランダムに開け、ポリカーボネート製の中空板を入れた物を制作。今回のリフォームでは所々に円形をモチーフに取り入れたました。機能的にはランダムの穴は廊下への採光を考えたものですが、子供たちにとっては、この穴から覗いたり、別の穴から覗いたりと新しい住まいの遊び道具の一つになりました。
キッチンと同様にオリジナル仕様で腕の良い職人さんによる造作です。1200mmの幅があるカウンター部分は水に強いポストフォームを使用し耐久性も安心。扉は柿渋仕上げで、内部はたっぷり収納。木製ハンドルはタオル掛けを兼ねたデザインです。洗面用品や化粧品、細かなものを納める側面の棚はパイン系の無垢材に天然オイル塗装。正面にはアンティーク感のあるミラーを設置し温かみのある空間に仕上がりました。 ■洗面ボール:KOHLER社
玄関には家族四人分の靴に加えて、子供の遊具などを収納できる大きめの下足入れを作りました。玄関の扉側はベビーカーや傘立てのスペース、廊下側はオープン棚でスリッパや子供用のヘルメットを収納するスペースになっており、玄関周りの細々したものも上手く収められるようになっています。レッドシダー無垢材、シナ材のフラッシュパネルに柿渋塗りの仕上げで天然素材を生かした作りになっています。
リビングに1ケ所、廊下に2ケ所 オリジナルの照明カバーを制作しました。それぞれ○△□をモチーフに銅線をロウ付けしてフレームを作り、手漉きの紙を貼ったもの。色のついた紙を一部に使ってアクセントをつけました。紙を通した柔らかい光とフレームのコントラストが天然素材で包まれた空間を優しく照らします。
電話台と言っても電話機をおかないので電話台ではないのですが、カレンダーやメモなどを貼るコルクボードを配置して家族の情報センター的な場所になります。引き出しと棚を一段設けてリビングにある細々とした物を収める収納になっています。
玄関の手前の壁面にヘビをモチーフにしたフックを2段取り付けました。主に子供用の上着・帽子・かばん等を掛けておくための物です。スペースを有効に使った工夫と、遊び心のあるデザインを形にしました。
キッチンとリビングの棚で使う収納箱を作りました。それぞれに合わせて作るのでピタリと収まるサイズのものが出来ます。表面は天然素材の空間に馴染むよう、手すき紙を貼った上に柿渋塗装で仕上げました。
娘家族が近くの中古のマンションを購入する事が決まると子供が幼稚園に入るタイミングにあわせて約2ヶ月後に引越しできるようにリフォームを行うこととなりました。基本設計から詳細設計、施工業者の選定や見積もりなど、同時進行で出来るところは同時にスケジュールを組みながら進めていきました。
全面的なリフォームになるのでマンションの管理組合の規約により、工事の事前申請を行い理事長と上下左右にお住まいの方から承諾を得ることが必要になりました。
プランが出来た段階で必要書類や図面を提出し下階への音対策や排水管の変更点などをわりやすい絵にして説明させて頂きました。3日程でリフォームの許可がおりいよいよ工事のスタートです。
マンションの管理組合による規約では下階への騒音対策として床衝撃音LL45基準を満たしていることが条件の1つに入っていました。騒音による住民間のトラブルを未然に防ぐためにも必要なもので、集合住宅では一定の基準が設けられているケースがほとんどです。
リフォーム前はカーペット敷きだったので問題はなかったのですが、無垢のフローリングをそのまま施工した場合には基準をクリアできません。そこで、防音マット敷いた上にフローリングをはる事で基準をクリアする方法を選びました。その分のコストは掛かってしまいますが、無垢のフローリングにすることで優しい風合いや暖かみのある空間が出来上がりました。
防音マット施工の様子。基準を満たした下地処理を行うことでを騒音に関する規約があっても無垢のフローリングをはることが可能になります。
無垢フローリング施工の様子。フランス産のボルドーパイン、表面はブラッシング処理されており細かな凸凹があります。
天然のオイル塗装で仕上げられたフローリング。暖かみがあり素足で歩くと気持ちのいいものです。子供たちにも優しい天然素材で仕上げました。
今回のリフォームは、娘家族の住まいで現場が近い事、急ぎのリフォーム等の条件がかさなったこともあり職人さんを直接手配して工事を行うことにしました。
そのため、各工程にあわせて職人さんや建材を手配し図面通りに施工が行われているかどうかを確認しながら進めていく現場監督・監理の仕事が重要になりました。工事が始まってからは毎日のように現場に入って職人さんとコミュニケーションを取り一部の作業は私も参加することで工事が進みました。なんとかスケジュール通り3週間の工事期間でリフォームが完了し引越しに間に合わせることができました。