最終章 完成
役所の完了検査も無事終わり、約束の椅子とテーブルも届け、お店の方も
良い形に出来上がりました。
21日から営業開始、チラシをまいたりせず静かにスタートするということです。
人工的に需要を作り出すというのではなく、お客の方からやってくるのを
待つという戦略、これからの長い道のりを思えば少しづつファンを増やして
いくのが一番良いやり方と言えるかも知れません。
お店の方はいくつかポイントがありますが、ポイントはあまり多くてもダメ
少なくてもダメと言うことで、その見極めは難しいところです。
ダルガラスの楕円の小窓は筋交いを避けての設置、流れるようなラインは
無理でしたが、ちょっと強すぎるかなと思っていた色の方はまずまずで、
一安心、お客さんからどのような評価が得られるでしょうか。
工務店(長野工務店)が持っていた古材が3カ所に使われています。
最近のはやりとも言えますが、やはりそ古材の味わいは得難いものがあり、
先人が施した技や時間が作り出した表情はすばらしいものがあります。
ビックテーブルの脚に使われている古材は多分隠し味のように働き、
ある時、ある人が気が付くと言ったところですね。
そばの葉っぱをモチーフにした照明器具、そばの実をデザイン化した入り口の
格子は、ある時気が付いてお店の記憶として残るようにと考えてのことです。
このお店の空間的な特徴の一つが長いアプローチです。
当初の設計通りデッキ敷きですが、緑が置かれたりして魅力的な場となると思います。
たばこを吸うところでもあり、待つ場ともなります。
デッキ、天井の格子、列柱すべて人を誘う要素として考えました。
長い様々な曲折があった仕事、膨大なエネルギーがかかった仕事でした。
多分このようなお店を、個店としてやるのは非常に困難な時代だと思われます。
資金力のある企業にしか可能性がありませんが、そこに個店が持つ個性と
多様性を期待することは出来ないでしょう。
貴重で希な幸運に満ちたケースだったと思います。
土地区画整理事業という開発地域にあったため、新しく場所を得て建て直しが
出来たのです。
近くにイケアやララポート、ポストコなど大きな開発がなされて、大きな集客を
しています。大きさ故の華やかさや快適さはありますが、個店が持つ「人間の顔」
をした、「人間サイズ」の「店主の人柄」がみえる特性はそこにはありません。
多分両方の時代だと思いますが、個店が圧倒的に弱くなっているのが現実だ
と思います。
そうした状況の中でこのようなお店は社会的に大きな存在理由があると思います。
商品力、人柄、デザインがバランスよく取れているとすれば、
繁盛して行くに違いない・・・と本当に期待します。